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日記や所感など

お前なんかに出会うんじゃなかったよ

某医療ドラマ第3期9話でK地先生から発せられた台詞なんですけど、これってすごくないですか?

加地先生は主人公に関してたびたびこれに類する発言をしています。「俺たちの人生はデーモンに出会う前と後で分けられる。もう出会う前には戻れない」(Y)、「あいつに(お前に)人生狂わされた」(複数回)など。

文字通りK地先生は彼女によって人生を狂わされているので(灘からT大医学部に進学してそのままT大学病院医局なんて絵に描いたようなエリートコースを歩んでいたのに、地方に飛ばされまくったり夜中に無許可でオペしたり果ては解雇されたり、本当に狂わされてる)、これらの発言は別段不自然ではないんですけど、身支度のBGM代わりにかけ流してるところにこの発言が耳に飛び込んできてぎょっとしてしまった。

出会って人生狂わされて、もう出会う前の自分には戻れなくって、悪魔みたいに思えるけど目が離せない、って。

まるで唯一無二の愛してる人みたいじゃないですか。

 

というか、まあ言ってみれば、私も今とても好きな人に、もし自分の気持ちを伝えることがあるとしたら、同じことを言うと思うんです。お前なんかに会うんじゃなかったよって。

出会って好きになったけど、好きでいるのは結構つらかったし、本当どうしてくれるんだよって思う。

その人がいると今までの自分じゃありえなかったようなことまでしてしまうし

その人を通して見た景色とか感じた温度とか空の色とか一生忘れられないし

もう出会う前には戻れない、一体どうしてくれるんだ、って思ってます。だからきっと言います。あなたなんかに出会わなければよかったです、って。

 

でもK地先生も私も(加地先生が彼女を愛しているとは言いませんが)、相手のことを心から嫌悪してそれを言うわけじゃないんですよ。もう腹が立つし、忌々しくて、できることならその出会いをなかったことにしてしまいたいって口では何度でも言うんだけど、じゃあ本当になかったことにしますかってなったら、多分そうはしないと思うんです。

だってもう出会った後の自分になっちゃってるから。今更出会わなかった頃になんて戻れないから。

 

人との出会い、関わりによって人は変化します。それは不可逆の変化です。仮に戻ったように見えたとしても、それは一度変化したものがもう一度変化しただけで、人の変化はやはり一方向なのです。

そう考えるとしがらみや忖度や期待、妬み嫉みばかりに思える、人間同士の関わりの日々も、とても尊いものに思えませんか。出会った人が自分の人格に影響を与え、自分もまた相手に影響を与えている。それは自分やその人の中でずっと有機的に存在するだけでなく、自分や相手が今後関わる人間にまで影響を与えるのです。

人は出会いによって作られているってこういうことなんですね。

 

そのドラマは二つの見どころがあります。一つはもちろん主人公が天才的な頭脳と手腕で患者の命を救っていくヒーロー物語。もう一つは主人公の周りの人が主人公に影響を与えられて少しずつ変化していく様子。まあ、これは私が勝手に思っているだけなんですけどね。めちゃくちゃ好きなので是非。