布団大好き!

日記や所感など

バレエと私 3

大人クラスでバレエを始めてみると意外なことにとても楽しかった。経験年数も体のコンディションもやる気も皆バラバラなので自分のペースで周りを気にせず頑張れたのが良かった。

スタジオで小さい頃に習っていて、若くてやる気のある私は先生に目をかけて貰えたので、そのことで嫌な言葉を聞くこともあったけれど、まったく意に介さないどころかわたしは喜んだ。

復帰半年後には発表会に出た。端役だったけれどライトに照らされる熱さは子どもの頃と同じだった。

バレエが楽しいとはっきり感じたのはあの頃が初めてだった。レッスンに行くのが憂鬱なのは変わらなかったけれど、踊るのは楽しかった。そして小学生の頃も本当は楽しかったのだと気付いた。

バレエが好きだ、そう思えるための10年間だったんだと思った。

 

復帰して1年と経たないうちに私はまた鬱屈とした気持ちになっていった。というのもバレエに慣れて感覚が戻ってくるにつれ、大人クラスのレベルや温度感が物足りなくなったのだ。

私にとってバレエは血のにじむような努力を重ねてなお届かない理想に向かってひたすら手を伸ばし続けるものだった。大人クラスの他の人にとってバレエはまあなんというか、ヨガの延長みたいな娯楽だった。その温度差に我慢ならなくなった。私のスタンスは専科クラス(小さい頃から続けている子が中学生〜高校生から入るクラス)のそれに近かった。

専科クラスで踊るには実力が足りないと分かっていながらそれでも専科への思いを捨てきれなかった私は、何人かの友人の後押しの力を借りて専科クラスのレッスンを受けることになった。

 

専科クラスのレッスンを受けてみるとあまりのハードさに毎回泣きそうになっていたような気がする。1年と経っていないのに記憶がおぼろげでよく思い出せない。

ただ体は確実に変わっていたし、一度専科クラスのレッスンを受けてみるともう大人クラスの空気感には本格的に我慢ならなかった。大人クラスのだるそうな諦めたような温度の中で発表会に出たくなんてないと思った。

そして私は専科クラスとして発表会に出ることを決めた。

「専科で発表会に出たいです」そう宣言した時、先生は「頑張らなきゃだめよ」と言って、それでも、わかったと言ってくれた。あの時なぜ断らなかったのだろう、とたまに思う。当時専科とは程遠い実力だった私の成長を期待してくれたんだと思うけど、たいした器だなと思う。