布団大好き!

日記や所感など

バレエを早くやめたいね

 

クラシックバレエを好きかと聞かれたら、答えに窮すると思う。見るのは好きだ。自分が踊るのは、どうだろう。好きだ、なんて即答できない。なら私はなぜこんな年にもなってしぶとくバレエを続けているんだろう。バレエは私の何なのか。

私の、この醜くてどろどろした感情に、何と名前を付けたら良いのだろう。

バレエを早くやめたいと思っている。毎週土曜は朝から憂鬱な気持ちになる。夕方になると、今週はなんと理由をつけて休もう、と考えている。勉強が忙しい。頭が痛いなどなど。18:20には家を出なきゃいけないのに、16:30くらいまでほんとに休む気持ちでいる。休もう休もうと思いながら、17:00くらいから何故か化粧を始め、辞めたい、早く辞めてやると思いながら予定通り18:20に家を出る。これを毎週馬鹿みたいに繰り返している。

やめたいのは本気だ。クラシックバレエなんて正直言って、正気の沙汰じゃない。爪先立ちなんて痛いし、爪が割れるし、毎日ストレッチしても全然筋肉が柔らかくならないし、ストレッチする時間が取れない事も多いし。お金をかけても上達しないし。自分がダメな人間であることを常に突き付けられ続けるし。最悪だ。

それでも私がバレエをやめられない理由は、小学生の時にベストを尽くさずにやめてしまったことに納得できていないことと、たまに、ほんの一瞬だけ、自分の納得できる動きができた時の快感を忘れられないこと、だと思う。おそらく。理想とのギャップで吐きそうになるくらい苦しい瞬間を幾度も重ねた先に、ほんの一回だけ、理想に通じる道が光るような瞬間がある。私はそれをずっと求めている。

バレエは好きではない。バレエを踊っている時間は、それでも、バレエのことを真剣に考えていて、バレエを踊っている自分を見つめている。プリエ、伸ばす。ルルベ。そのままパッセ、アン・オーでバランス、キープ。軸を寄せていく。脚の爪先から手の指先まで一本の糸を通す。足が痛い。汗が流れて気持ち悪い。自分が醜くてしょうがない。こんなことを、何年続けたって、永遠に自分が納得しないことをどこかで確かに分かっている。

大人クラスの周りの人たちとモチベーションに大きなギャップがあること。それでも、自分は専科クラスに行くには圧倒的に足りないこと。専科クラスでやっていくだけのモチベーションはもうないこと。全て分かっている。フェッテができない。ダブルピルエットができない。脚が開かない。私は専科クラスに行けないと満足しないのに、永遠に行けないであろうことが分かっている。落としどころが分からない。どこへも行けない。バレエは私にとってやり残した仕事のようなもので、それが、やればやるほどゴールが遠ざかっていって、終わらない悪夢のようだった。

トゥーシューズのリボンは私を囚える足枷のようだ。私はそれを自らの手できつく巻く。舞台の上で解けないように。命が尽きても立ち続けられるように。自らの意思で、きつく巻いて、その跡が、いつまでもくっきりと残っている。

やめたいやめたいと思いながら、それでもやめられない、やめたくない、まだ終わることができない。自分の思い通りにならないので嫌だ、どこまでも頑張れるから好きだ。苦しい。つらい。私は何のために踊っているのか。誰も私が踊らないことで困らないのに。この感情に好きという名前を付けることができない。好きだなんて言えないし言いたくない。でも、嫌いなものを時間とお金を削ってやるわけがない。好きと嫌いを混ぜて、煮詰めて、10年寝かせた恐ろしく醜くてどろどろしたこの感情を、なんと呼べばいいのか。

早くバレエに納得して、綺麗な思い出にしてやめてしまいたい。

どこまでも筋肉が伸びて。耳元で風の音が聞こえるくらい早く回って。誰よりも高く跳んで。音楽と一つになるんじゃなくて、私が音楽になって。私はその瞬間に消えたい。