昔の話

 

小学生の頃から通学に片道1時間かけていたので距離の感覚が壊れている。普通の人は片道1時間かかる場所は「遠い」と感じるらしいが、私が遠いと感じるのは片道1.5時間を超えてからだ。みんな贅沢だなと思うし、恵まれていて羨ましい。とはいえ元来出不精な私はこのくらいの感覚のバグがなければ本当に引きこもっていただろうし、世の中上手くできているなと思うこともある。

感覚が狂っているので家から1.5時間かかる場所にあった予備校を遠いと思ったこともなかった。気に入って通いつめていた。今日は私が予備校に通いつめた最後の日々の話をしようと思う。

 

今から思えば本当に頭がおかしいとしか思えないが、入試の後わざわざ予備校に寄っていた。自分の感覚では「帰っていた」という感覚の方が近い。入試会場から直接帰った方が明らかに早かったし入試の後くらい家でゆっくり休んだって誰も責めなかったと思う。それでも私は特に無理をしているという感覚もなく当たり前のように予備校に戻って勉強してから帰っていた。

2016年2月15日は第一志望の入試だった。電車で乗り過ごしてギリギリの到着になるところから始まり、得意の英語が易化し、手堅く点を取りたい日本史も奮わず、本当に最悪としか言いようがない出来だった。お通夜みたいな気持ちで副都心線直通の東急東横線に乗って池袋まで来た。副都心線ホームは丸ノ内線の先にある。長い通路を通って丸ノ内線ホームから駅に上がる景色を、今でも覚えている。

私がなんで家から1.5時間かかる場所にあった予備校に通いつめていたかというと、単純に感覚が狂っていて馬鹿だったこと以外に、そもそもその場所が好きだったからなんだと思う。家みたいな場所だった。家でまったく心を開かなかった私が繕わない心持ちでいられる場所だった。人が良かった。本当にいい場所だった。もう行きたいと思わないけど、幸せだったと思う。

もし、自分の過去の時間をVRかなんかで体験できるようなアトラクションがあったら、間違いなく高校3年生の1年間を選ぶ。特に後半がいい。それか、彼氏と一緒に寝て、一緒に起きるあの時間がいい。私の幸せはもうそれで十分だ。あとの人生は人のために生きたい。私の命を燃やして今まで出会った人が幸せになる世界を作りたい。